採用実務
特定技能の面接で確認できること、確認できないこと
特定技能1号の候補者は、技能試験と日本語試験に合格した方です。試験がすでに答えていることを面接で聞き直しても、判断材料は増えません。面接で確かめる価値があることを、質問の例と、その質問が何を明らかにするかとあわせて整理しました。
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特定技能1号の候補者は、技能試験と日本語試験にすでに合格した方です。ですから面接で「日本語はどのくらいできますか」「その仕事の経験はありますか」と尋ねても、試験がすでに答えていることを聞き直しているだけになります。
面接で確かめる価値があるのは、試験が答えていない3つです。業務経験の具体性、就業条件を理解したうえで応じているか、そして業務上の意思疎通が成り立つか。この記事では、それぞれについて質問の例と、その質問が何を明らかにするかを整理します。
試験がすでに答えていること
特定技能の各段階で求められる水準は、次のように定められています。
| 段階 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 技能検定試験3級や特定技能1号評価試験等 | A2.2相当以上(JFT-Basic、JLPTのN4等) |
| 特定技能2号 | 特定技能2号評価試験等 | B1相当以上(JLPTのN3等) |
候補者が特定技能1号の在留資格で日本にいらっしゃるのであれば、この技能水準と日本語能力水準は満たされています。育成就労を経ずに、国外で試験を受験して特定技能1号で入国される道筋もあります。
確認すべきは、水準を満たしているかではなく、その水準が自社の業務にとって何を意味するかです。
そして、ここに1つ落とし穴があります。日本語能力の要件を満たす試験は、いずれも「話す」を測っていません。 JLPTの試験科目は言語知識・読解・聴解で、話す能力を測る科目はどの級にもありません。A2.2相当という水準は満たしていても、配属先で指示を聞き返せるかどうかは、そこからは分かりません。この構造についてはJLPTを持っていない候補者の日本語能力を、どう見るかに詳しく書いております。
面接で確かめる3つのこと
1. 業務経験の具体性
履歴書に「製造ライン3年」とあっても、実際に担当された作業の範囲は人によって大きく異なります。ここを具体化できるかどうかが、配属後の立ち上がりに直結します。
尋ね方の例
- 「前の職場での1日の流れを、朝からご説明いただけますか」
- 「その作業で、いちばん失敗しやすいのはどこでしたか」
- 「不具合を見つけたとき、どうされていましたか」
3つ目のような質問は、経験の有無だけでなく、判断を求められたときにどうするかを明らかにします。手順を覚えている方と、手順の理由を理解している方は、答え方が変わります。
2. 就業条件を理解したうえで応じているか
早期離職の話をするとき、多くの場合に問題になるのは能力ではありません。聞いていた条件と違ったという食い違いです。
尋ね方の例
- 「勤務地と通勤の方法について、どのようにお聞きになっていますか」
- 「シフトの入り方について、聞いている内容をご説明いただけますか」
- 「この条件で、ご懸念の点はありますか」
3つ目は、答えが「ありません」でも意味があります。この質問をした記録が残るためです。条件について確認の機会を設けたかどうかは、後から問題になったときに効いてきます。
なお、ここで生活の事情に踏み込まないようご注意ください。「ご家族は日本にいらっしゃいますか」「どこにお住まいですか」は、確認したくなる場面ですが、厚生労働省が示す配慮すべき事項に該当します。詳しくは外国人採用の面接で聞いてはいけないことをご覧ください。
3. 業務上の意思疎通が成り立つか
「日本語ができますか」と尋ねても、答えは「はい」か「少しできます」にしかなりません。見るべきは、話していただいた内容そのものです。
尋ね方の例
- 「いまのご説明を、もう一度、順番にお願いできますか」
- 「(あえて少し早口で)……この作業の手順は分かりますか」
- 「分からないことがあったら、職場ではどうされますか」
2つ目は意地悪な質問に見えますが、そうではありません。分からなかったときに「もう一度お願いします」と言えるかどうかを見ています。これは語彙の量とは別の能力で、就業後にもっとも効いてきます。黙ってうなずいてしまう方と、聞き返せる方の差は、現場では大きな差になります。
尋ねない質問
配慮すべき事項に該当するため、外国人材の採用でも日本人の採用でも尋ねません。
| 尋ねない | 代わりに確認できること |
|---|---|
| ご家族の職業・所在・収入 | この仕事をどのくらい続けたいと考えているか |
| お住まいの間取り・同居人数 | 通勤の方法と、条件として問題がないか |
| 信仰、お祈りや食事の必要 | (内定後)就業条件の説明として、必要があれば申し出ていただく |
| 本籍・出生地 | 国籍・在留資格・在留期間(届出に必要な事項) |
右の列は、いずれも本人の適性・能力、または手続き上必要な事項です。左の列は、日本人の候補者にも尋ねない事項です。迷ったときは、この対照で判断できます。
面接の長さより、話していただいた量
最後に、実務的なことを1つ。
面接の時間を長くしても、質問が事実確認ばかりで回答が一語ずつであれば、判断材料は増えません。逆に、前職の作業を手順としてご説明いただく質問を1つ入れるだけで、業務の理解度も、日本語での説明の組み立ても、同時に見えます。
日本語での面接では、答えが短くなりがちです。答えが短いと、面接官は不足分を推測で補います。「たぶん経験は浅いのだろう」「おそらく長くは続かないだろう」といった推測は、尋ねていないだけで判断には使われています。
母語で面接を行えば、同じ質問に対する情報量が変わります。業務経験の具体性、前職を離れた理由、就業条件の受け止め方は、母語であれば説明できる候補者が多くいらっしゃいます。ヒトシルが候補者の母語で面接を行い、日本語のレポートでお読みいただく形にしているのは、この差のためです。
面接から評価、記録までの流れはサービス概要のページに記載しております。
よくあるご質問
- 特定技能1号の候補者に、日本語能力を面接で確認する必要はありますか。
- あります。特定技能1号の日本語能力水準はA2.2相当以上とされ、JFT-BasicやJLPTのN4等の合格で確認されますが、これらの試験に「話す」を測る科目はありません。要件を満たしていることと、配属先で業務上の会話が成り立つことは別に確かめる必要がございます。日本語で少しお話しいただくだけでも、聞き返しや言い直しができるかどうかは分かります。
- 面接では、どのくらいの時間をかけるべきですか。
- 時間よりも、候補者が実際に話した量のほうが判断材料になります。長い面接でも、質問が事実確認ばかりで回答が一語ずつであれば、得られる情報は多くありません。前職で担当された作業を、手順としてご説明いただくような質問を1つ入れるほうが、30分の事実確認より材料になります。
- 母語で面接をすると、日本語能力が確認できなくなりませんか。
- 1回の面接で使用する言語を1つに固定する場合は、そのとおりです。母語での面接では日本語の発話が発生しないため、日本語能力を評価する材料がございません。母語での深い聞き取りと日本語能力の確認の両方が必要な場合は、面接を2回に分けてご利用いただいております。
出典
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)(令和8年7月改訂)
特定技能1号・2号に求められる技能水準と日本語能力水準、特定産業分野の数、育成就労 を経ずに国外で試験を受験して特定技能1号で入国する道筋についての記載によります。 分野ごとの取扱いは分野別運用方針によって異なります。
- 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」採用選考時に配慮すべき事項
本記事で「尋ねない」としている事項の区分と文言は、このページの表記によります。
- 日本語能力試験 JLPT「試験科目と問題の構成」
JLPTの試験科目は言語知識・読解・聴解であり、「話す」を測る科目はN1からN5までの いずれの級にもありません。
本記事は公開時点で確認できた情報にもとづいて記載しております。制度は改正されることがあり、個別の事案についての法的な判断を示すものではございません。実際のご対応にあたっては、原典および所管官庁の最新の公表資料をご確認ください。
