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法令と選考

外国人採用の面接で聞いてはいけないこと

厚生労働省が示す「就職差別につながるおそれのある14事項」を、外国人材の採用面接にあてはめて整理しました。在留資格の確認は事業主の義務であり、14事項とは別の話です。その線引きを、具体的な質問の例で説明しております。

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写真はイメージです。

外国人材の採用面接で確認してよいのは、その仕事ができるかどうかと、日本で働くことができる在留資格を持っているかどうかです。国籍と在留資格の確認は事業主に求められている手続きであり、聞かなければなりません。一方で、本籍、家族、住まい、信仰といった背景は、日本人を採用するときと同じく、選考の場で尋ねる対象ではありません。

この2つは混同されやすく、混同されるのには理由があります。外国人材の採用では在留カードを確認する場面が実際にあるため、「外国人だから確認してよいこと」の範囲が広いように感じられるためです。実際には、広がっているのは在留資格に関する手続きだけで、選考で配慮すべき事項は日本人の採用と1つも変わりません。

厚生労働省が示す14事項

厚生労働省は「公正な採用選考」の考え方として、採用選考時に配慮すべき事項を14に整理しています。区分も文言も、厚生労働省の示すとおりです。

区分 事項
本人に責任のない事項 本籍・出生地に関すること
家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項 宗教に関すること
支持政党に関すること
人生観、生活信条に関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合・学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
採用選考の方法 身元調査などの実施
本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施

前の11項目は、面接で尋ねる質問そのものにかかわります。後の3項目は質問の内容ではなく、選考の進め方にかかわる事項です。応募書類の様式や、健康診断をどの段階で行うかは、面接官の裁量ではなく採用の設計の問題である、という区分だとお考えいただくと分かりやすいかもしれません。

外国人採用で、とくに触れやすい5つの質問

14事項の一覧は多くの記事で紹介されています。しかし外国人材の採用では、採用側に悪意がなく、むしろ配慮のつもりで尋ねてしまう質問がいくつかあります。以下は、その典型です。

1.「ご家族は日本にいらっしゃいますか」

家族に関することにあたります。

この質問が出てくる理由ははっきりしています。母国に家族が残っている候補者は帰国するのではないか、という懸念です。早期離職はどの採用企業さまにとっても最大の損失ですから、確認したくなるのは自然なことです。

厚生労働省も、家族に関する質問については次のように注意を促しています。

面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようですので、注意しましょう。

つまり、悪意のある質問としてではなく、場を和ませようとして出てしまう質問として想定されています。外国人材の面接では、そこに「帰国してしまわないか」という懸念が重なるぶん、出やすさが上がります。

確認したくなる動機が切実であることと、尋ねてよいかどうかは別の問題です。そして実務的にも、この質問は答えになりません。家族の所在から離職の可能性を読み取ることはできず、読み取れると考えること自体が、本人の適性・能力とは関係のない事情で選考していることになります。

聞きたいことが「長く働いていただけるか」であれば、その仕事について、どのくらいの期間をどう考えているかを直接うかがうことができます。これは日本人の候補者にも同じように尋ねられる質問です。日本人の候補者に同じ質問をするかは、この線引きで迷ったときのもっとも実用的な判断基準です。

2.「いま何人でお住まいですか」

住宅状況に関することにあたります。

社宅の手配や通勤の相談から自然につながってしまう質問です。住居の支援が必要かどうかを確認する必要がある場合は、選考の場ではなく、内定後の労働条件や生活支援の話としてうかがう形に分けることができます。

3.「お祈りの時間は必要ですか」「食べられないものはありますか」

宗教に関することにあたります。

これも配慮から出る質問です。礼拝の場所や食事について、受け入れる側が事前に準備したいという意図は理解できます。

それでも、選考の場で尋ねることには問題があります。答えが選考の判断に影響しうる場面で尋ねている以上、影響していないことを後から示すことができないためです。実務上は、選考が終わった段階で、就業条件の説明とあわせて本人から申し出ていただく形をとっている企業さまが多くあります。職場の設備や食堂の対応を説明したうえで、必要があれば相談してほしいと伝えるのであれば、本人の申告にもとづく対応になります。

4. 応募書類に本籍を記載させる

本籍・出生地に関することにあたり、同時に本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用にもあたります。

ここが、外国人採用でもっとも混同されやすい点です。国籍と本籍は別のものです。 国籍は、在留資格の確認と外国人雇用状況の届出のために事業主が把握する必要があります。本籍は、そのどちらにも必要ありません。在留カードに記載されているのは国籍・地域であり、本籍ではありません。

「外国人だから出身地を確認しなければ」という発想で応募書類に記入欄を設けてしまうと、必要のない情報を、配慮すべき事項に該当する形で集めることになります。

5. 通訳を介した面接で、通訳者が補ってしまう

質問そのものではなく、選考の進め方の問題です。

母語での面接で通訳者を介する場合、通訳者が候補者の答えを要約したり、質問の意図を推測して言い換えたりすることがあります。悪意のない親切ですが、結果として、面接官が評価している内容と候補者が実際に話した内容が一致しなくなります。

不採用となった候補者について後から説明を求められたとき、根拠として示せるのは面接官の記憶ではなく、候補者が実際に話した内容です。通訳を入れる場合は、要約ではなく発言そのものを訳していただくことを事前にお伝えしておくことをおすすめします。

在留資格の確認は、14事項とは別の話です

ここまでの説明は、在留資格の確認をためらう理由にはなりません。

外国人材を雇用する事業主には、就労が認められる在留資格を持っているかどうかを確認することが求められています。就労が認められない方を働かせた場合、事業主の側が責任を問われます。また、外国人材を雇い入れたときと離職したときには、ハローワークへの届出が必要です。届出には氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域などを記載します。

つまり、国籍・在留資格・在留期間は、把握しなければならない情報です。14事項が対象としているのは、これらとは別の、本人の適性・能力に関係のない背景情報です。

線を引き直すと、次のようになります。

確認する 確認しない
就労が認められる在留資格を持っているか 本籍・出生地
在留期間と、その満了日 家族の職業・所在・収入
資格外活動許可の有無(該当する場合) 住まいの間取りや同居人数
業務に必要な技能・経験 信仰、支持政党、思想信条
業務に必要な日本語での意思疎通ができるか 尊敬する人物、愛読書

右の列は、日本人の候補者に対しても尋ねない事項です。左の列は、外国人材の採用でのみ必要になる手続きです。混ざらないように分けておくことが、そのまま公正な選考の設計になります。

特定技能の候補者について、面接で具体的に何を確認する価値があるかは特定技能の面接で確認できること、確認できないことに整理しております。

「日本語で聞かなければ分からない」という思い込み

もう1つ、外国人採用に固有の落とし穴があります。日本語での面接では候補者の答えが短くなりやすく、答えが短いために、面接官が背景を推測で補ってしまうことです。

日本語で十分に説明できなかった候補者について、「おそらく家庭の事情だろう」「たぶん長くは働かないだろう」と推測が入り込む余地は、答えが短いほど大きくなります。これは14事項に触れる質問をしていなくても、同じ結果を招きます。尋ねていないだけで、判断の材料としては使われているためです。

対処としては、尋ねる質問を減らすのではなく、答えを長くするほうが確実です。母語で面接を行えば、同じ質問に対する情報量が変わります。業務経験の具体性、前職を離れた理由、就業条件の受け止め方は、母語であれば説明できる候補者が多くいらっしゃいます。

質問を、読み上げる前に検査するという考え方

面接官が14事項を覚えていても、実際の面接では深掘りの過程で線を越えることがあります。候補者が家族の話に触れたとき、自然に「ご家族は何人ですか」と続けてしまうような場面です。

ヒトシルでは、AIが生成した質問を候補者に読み上げる前に、14事項に該当しないか機械的に検査しております。該当した質問は読み上げられることなく破棄され、破棄した事実が記録に残ります。評価基準の作成画面でも同じ検査が働き、未対応の警告が残る求人は公開できない仕様です。

生成AIは、会話の流れによっては家族や生活環境に触れる質問を作ります。人の面接官が線を越えるのと同じ場面で、AIも線を越えます。 AI面接そのもののリスクについてはAI面接は、外国人採用で公平かに、提供している側から書いております。

この検査は設定で無効化できる項目ではなく、すべてのご契約で同じように働きます。詳しくは法令への対応のページに記載しております。

よくあるご質問

在留資格や国籍を確認することは、14事項に触れますか。
触れません。就労が認められる在留資格を持っているかどうかの確認は、外国人材を雇用する事業主に求められている手続きです。国籍・在留資格・在留期間は、雇入れ時と離職時のハローワークへの届出にも必要となります。14事項が対象としているのは、これらとは別の、本人の適性・能力に関係のない背景情報です。なお国籍と本籍は別のものであり、本籍は14事項の1つ目にあたります。
宗教上の配慮が必要かどうかは、いつ確認すればよいですか。
選考が終わった段階で、就業条件のご説明とあわせてご本人から申し出ていただく形をとることができます。選考の場で尋ねた場合、その回答が判断に影響していないことを後から示すことができません。職場の設備や食事の対応をご説明したうえで、必要があればご相談くださいとお伝えするのであれば、ご本人の申告にもとづく対応になります。
面接官が14事項を覚えていれば十分ですか。
覚えていることと、実際の面接で線を越えないことは別の問題です。厚生労働省も、家族に関する質問について「面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようですので、注意しましょう」と注意を促しています。深掘りの流れで自然に出てしまう質問が問題になりやすいため、質問の設計と記録の両方で確認できる形にしておくことをおすすめします。

出典

  1. 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」採用選考時に配慮すべき事項

    本記事の14事項の一覧・区分・文言は、このページの表記に従っています。同省は 「(a)本人に責任のない事項の把握」「(b)本来自由であるべき事項(思想・信条に かかわること)の把握」「(c)採用選考の方法」の3区分で示しています。

本記事は公開時点で確認できた情報にもとづいて記載しております。制度は改正されることがあり、個別の事案についての法的な判断を示すものではございません。実際のご対応にあたっては、原典および所管官庁の最新の公表資料をご確認ください。

ヒトシルでの取り扱いをご覧ください

この記事でご説明した内容が、実際の面接と評価レポートでどのように扱われるかは、法令への対応のページに記載しております。

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