採用実務
育成就労制度で、採用選考の実務は何が変わるか
育成就労制度は令和9年4月1日から運用が始まります。監理団体は許可制の監理支援機関になり、本人の意向による転籍が一定の要件の下で認められます。決まっていることと、まだ決まっていないことを分けて整理しました。
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育成就労制度は令和9年(2027年)4月1日から運用が始まります。技能実習制度を発展的に解消して創設された制度で、目的が技能移転による国際貢献から、人手不足分野における人材の育成・確保に変わります。
採用選考の実務にもっとも影響するのは、本人の意向による転籍が一定の要件の下で認められる点です。受け入れた方が同じ分野の別の受入れ機関へ移ることが、制度上ありうるようになります。
施行日はまだ先ですが、手続きはすでに動き始めています。監理支援機関の許可については令和8年4月15日から、育成就労計画の認定については令和8年9月1日から、施行日前の申請の受付が始まっています。
いつ、何が始まるのか
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和6年6月21日 | 改正法公布(法律第60号) |
| 令和8年4月15日 | 監理支援機関の許可について、施行日前申請の受付開始 |
| 令和8年9月1日 | 育成就労計画の認定について、施行日前申請の受付開始 |
| 令和9年4月1日 | 育成就労制度の運用開始(施行日) |
根拠法は「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」です。
技能実習と何が変わるか
目的が変わります
もっとも根本的な変更です。技能実習制度は技能移転による国際貢献を目的とする制度でしたが、育成就労制度は我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする制度として創設されました。
3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準の技能を有する人材を育成することが想定されています。育成就労は特定技能1号への入口として設計されており、育成就労を終えた時点で求められる技能水準と日本語能力水準は、特定技能1号のそれと同等とされています。
この変更は、選考の場面での問いの立て方にも影響します。「日本で技能を学びたいか」ではなく、**「この職場で3年働き、その先も同じ分野で働いていくことを、どう考えているか」**が確認すべきことになります。
監理団体は、許可制の監理支援機関になります
技能実習制度の監理団体にあたる役割は、監理支援機関が担います。監理支援機関は許可制で、許可基準は厳格化されています。
重要なのは、技能実習制度の監理団体であっても、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできないという点です。自動的に移行するものではありません。
育成就労計画は認定制です
受け入れる外国人材ごとに「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構の認定を受けます。計画には育成就労の期間(3年以内)、目標(技能、日本語能力)、内容等を記載します。
目標に日本語能力が明記される点は、選考の段階から意識しておく意味があります。入口の要件を満たしているかどうかだけでなく、3年後にどの水準まで到達する計画なのかが、書面に残ることになります。
本人の意向による転籍が認められます
技能実習制度では、原則として本人の意向による転籍は認められていませんでした。育成就労制度では、暴力やハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等のやむを得ない事情による転籍に加えて、新たに、一定の条件の下で本人の意向による転籍も認められます。
条件としては、一定の技能水準および日本語能力水準に達していること、同一の受入れ機関で一定期間(分野により1年から2年)就労していること、同一の業務区分内であることなどが示されています。日本語能力については、A2.1相当以上の試験に合格していることが条件とされ、水準は分野ごとに設定されます。
転籍が認められることは、選考にとって何を意味するか
ここは慎重に申し上げます。
転籍が制度上可能になることは、受け入れた方が別の受入れ機関へ移りうるということです。採用にかけた費用と、育成にかけた時間の扱いは変わります。
ただし、これに対して「定着しやすい人を選考で見分ける」という答え方を、当社はいたしません。定着のしやすさを事前に判定できると申し上げられる根拠を、当社は持ち合わせていないためです。
申し上げられるのは、より地味なことです。3年間同じ職場で働き、そのあとも同じ分野で働いていくという前提に、候補者ご本人がどう向き合っているかを、選考の段階で聞けているかどうか。仕事の内容、勤務地、生活の条件について、候補者が理解したうえで応じているかどうか。これらは判定ではなく、確認です。そして確認は、短い日本語での面談ではしばしば足りません。
日本語能力の要件は、段階で決まっています
育成就労から特定技能へと進む道筋には、日本語能力の水準が段階ごとに定められています。水準は「日本語教育の参照枠」の段階で示されます。
| 段階 | 日本語能力水準 | 認められている試験の例 |
|---|---|---|
| 育成就労(就労開始まで) | A1相当以上 | JFT-Basic、JLPTのN5等。または相当する日本語講習の受講 |
| 本人意向による転籍時 | A2.1相当以上 | JFT-Basic(分野ごとに設定) |
| 特定技能1号 | A2.2相当以上 | JFT-Basic、JLPTのN4等 |
| 特定技能2号 | B1相当以上 | JLPTのN3等 |
2点、実務上の注意があります。
入国時には、技能や日本語能力の要件はありません。 要件がかかるのは就労開始前までです。そのため、入国後に日本語講習を受けて要件を満たす道筋も想定されています。A1相当については、試験の合格に代えて相当する日本語講習の受講でも満たすことができるとされています。
そして、ここに挙がっている試験はいずれも「話す」を測りません。 JLPTの試験科目は言語知識・読解・聴解で、話す能力を測る科目はどの級にもありません。水準は話すことを含む尺度で書かれ、充足の確認は話すことを測らない試験で行われる、という構造になっています。要件の充足と、配属先で会話が成り立つかどうかは、別に確かめる必要があります。この点はJLPTを持っていない候補者の日本語能力を、どう見るかに詳しく書いております。
技能実習からの経過措置
施行日の時点で技能実習を行っている方については、経過措置が設けられています。
施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている場合は、引き続き技能実習を行うことができます。この場合には技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労へ移行することはできません。
1号技能実習生は施行後も2号技能実習に移行することが可能です。3号技能実習への移行については、施行日時点で2号技能実習を1年以上行っている方に限られます。 ここは対象が狭いため、該当しうる方がいらっしゃる場合は早めのご確認をおすすめします。
いま準備できること
制度の細目は分野別運用方針や省令で定まっていく部分が残っていますが、施行日を待たずに進められることがあります。
- 監理支援機関の許可の見通しを確認する。 いまお付き合いのある監理団体が許可を申請しているか、その見通しはどうか。許可がなければ監理支援事業は行えません。
- 自社の分野が育成就労産業分野に含まれるかを確認する。 令和8年7月時点で、特定産業分野19分野のうち育成就労産業分野の設定がないのは自動車運送業分野と航空分野のみとされています。ただし分野・業務区分は追加されることがあり、新たに追加された分野の受入れは上乗せ基準告示の公布・施行後に開始される予定とされています。
- 選考で何を確認するかを決めておく。 3年間の就労と、その先の進み方について、候補者と何を話しておくか。制度が変わっても、この部分は各社が自分で決めることです。
- 選考の記録の残し方を決めておく。 転籍が制度上ありうる以上、なぜその方を採用したのか、あるいはしなかったのかを、後から説明できる形にしておく意味は増します。
まだ決まっていないこと
最後に、この記事が断定していないことを明示しておきます。
- 分野ごとの細目。 転籍に必要な就労期間や日本語能力の水準は分野ごとに設定されます。自社の分野については、分野別運用方針をご確認ください。
- 新たに追加された分野の受入れ開始時期。 令和8年1月23日の閣議決定により追加された分野・業務区分については、上乗せ基準告示の公布・施行後、準備が整い次第の開始とされています。
- 運用の実際。 施行前の制度であり、実際にどう運用されるかは施行後に明らかになる部分があります。
制度は改正されることがあります。ご対応にあたっては、必ず出入国在留管理庁の最新の公表資料をご確認ください。
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よくあるご質問
- 育成就労制度はいつから始まりますか。
- 令和9年(2027年)4月1日から運用が始まります。根拠となる改正法は令和6年6月21日に公布されており、一部の規定を除き同日が施行日とされています。施行日を待たずに手続きを始められるものもあり、監理支援機関の許可については令和8年4月15日から、育成就労計画の認定については令和8年9月1日から、施行日前の申請の受付が始まっています。
- 技能実習との一番大きな違いは何ですか。
- 制度の目的が変わります。技能実習制度は技能移転による国際貢献を目的としていましたが、育成就労制度は人手不足分野における人材の育成・確保を目的として創設されました。実務上とくに影響が大きいのは、本人の意向による転籍が一定の要件の下で認められる点です。技能実習制度では原則として認められていませんでした。
- いまの監理団体は、そのまま監理支援機関になれますか。
- なれません。監理支援機関は許可制であり、許可基準は厳格化されています。技能実習制度の監理団体であっても、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできないとされています。許可に係る施行日前の申請は令和8年4月15日から受け付けられています。
出典
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)(令和8年7月改訂)
制度の目的、監理支援機関の許可制、育成就労計画の認定制、日本語能力水準の各段階、 育成就労産業分野の数、技能実習の経過措置は、この資料の記載によります。分野ごとの 取扱いは分野別運用方針によって異なります。
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」
根拠法は「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生 の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年6月21日公布、法律第60号)です。 施行日は一部の規定を除き令和9年4月1日とされています。
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
施行日前申請の受付開始日、転籍の要件、入国時および就労開始前の日本語能力要件は、 このQ&Aの記載によります。
- 外国人技能実習機構「育成就労制度について」
監理支援機関の許可に係る施行日前申請の開始について確認しています。
本記事は公開時点で確認できた情報にもとづいて記載しております。制度は改正されることがあり、個別の事案についての法的な判断を示すものではございません。実際のご対応にあたっては、原典および所管官庁の最新の公表資料をご確認ください。
